オレンジをくわえて

2017/07/26 Wed 07:25:01

空調の効いた電車の中に
モノクロの集団が流れ込む

蜜柑色のアイスを咥えて
学生はホームに去っていく

オレンジ色の夕陽を咥えて
雲は山蔭に消えていった

今日も短い夜が来る
私は何処へ帰ろうか


パレット100題

イカサマ・セピア

2017/07/16 Sun 07:13:01

久々に帰った故郷の町で
気取った眺めを写真に収める
駅のポスターでよく見かける
懐かしさのない 見知った風景

よそ者のつけた色を重ねて
見栄えのいい画を切り取ったら
嘘の郷愁を添えて拡散した
何の思い出もない場所で

僕が写す この町の過去は
故友にとっては無粋な色だ
エイジング加工の贋物と
きっと 君も嗤うんだろう


パレット100題

変色

2017/05/28 Sun 15:26:01

底抜けな明るさが嘘っぽくて
お綺麗な言葉を嫌っていた

陳腐な表現は安っぽくて
奇を衒うのを好んでいた

優しい色を遠ざけながら
尖って生きてきただろう

醜い言葉に眉を顰めて
何様になったつもりだい

白く汚れた僕を見透かして
10年前の君が嗤った


パレット100題

憂鬱パレット

2017/05/17 Wed 15:16:01

透き通るような空の青さも
遠く広がる緑の景色も
汚れた私のパレットでは
爽やかに表現できない

暗く澱んだ鉛の空
枯れてしまった葉の残骸
そんな絵画を生み出すなら
何も描かないほうがいい

筆を置いて キャンバスを離れて
まずはパレットを洗いに行こう
疲れた色を濯ぎ落せば
きっと また綺麗な絵が描ける


パレット100題

黒+ピンク

2017/04/12 Wed 16:10:02

旬の野菜を皿に並べて
今宵は窓辺で過ごそうか

昼間は白いヤマザクラが
夜の香りで紅くなりだす

だんだん空気も冷え込んで
いよいよ花は美しい

ピンクに染まる桜を見て
春の夕闇に感謝した


パレット100題

右手に黒

2017/03/18 Sat 15:13:02

上等なペンを手に持って
文明の利器で戦おうぜ

凶器で武装しなくても
僕らは理論で武装できる


パレット100題

鏡越しのスカイブルー

2017/03/11 Sat 15:07:02

朝起きたら会う家族と
いつもの道で出会う人と
会話するたび 目に映る
瞳の中のわたしの色

今日のわたしは快晴か
心は真っ新 青空か
いくつも鏡を覗き込んで
毎日 チェックしているの

鏡が澄んだ空色なら
わたしの色も きっとそう
おはよう 今朝もいい天気
爽やかな青と いってきます


パレット100題

無色透明

2017/03/06 Mon 15:02:01

ある晴れた春の日に
硝子窓を磨いて掃除した
桜が咲いたら眺めたくて
念を入れて掃除した

見慣れていたはずの窓が
驚くほどに透き通って
綺麗だと思っていた硝子が
そうではないと気づかされた

ときどきは 心の硝子も
ようく磨いて 綺麗にしよう
窓の汚れを見落として
美景を霞ませないように


パレット100題

有温寒色

2017/02/26 Sun 14:18:01

透明なカップに注ぎ入れた
温かな青のハーブティー

小さく柔らかな花の香りが
乾いた気持ちを潤していく

黄色い魔法を一振りすれば
カップの中はさくら色

明るい色を口にして
草木の芽吹く春を待とう


パレット100題

いつか見た赤い傘

2017/01/21 Sat 13:13:01

雪の中にパッと咲いた
大きな赤い傘の花

温かい茶を匂わせて
蜜蜂のように人が寄る

席を求めて椅子を覗けば
鮮やかな牡丹と目が合った

それは何よりも芳しい
君と出会った冬の記憶


パレット100題
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